滞留在庫とは?「何日で滞留」を決める基準と、段階別の対処法
滞留在庫とは、仕入れた後に一定期間動きのない在庫を指します。ただしこの「一定期間」に決まった定義はありません。数か月とする企業もあれば、数年を基準とする企業もあります。ここに、多くの現場がつまずく理由があります。
基準がなければ、どの在庫が問題なのかを判別できず、対処のタイミングも決められません。「なんとなく古い気がする」という感覚のまま放置され、気づいたときには値引きしても売れない状態になっています。滞留在庫の管理で最初にやるべきことは、処分の方法を考えることではなく、自社にとって何日以上を滞留とするかを決めることです。本記事では、基準の決め方と、滞留の段階に応じた対処法を解説します。
目次
滞留在庫とは|混同されやすい用語を整理する
滞留在庫の定義
滞留在庫とは、一定期間にわたって販売・出庫などの動きが少ない、または止まっている在庫を指す言葉として使われます。ただし、「何日以上動かなければ滞留在庫」といった統一的な日数基準があるわけではなく、企業や商品特性によって判断基準は異なります。
また、「滞留」は在庫の動きを表す概念であり、商品の品質状態や販売可能性とは分けて考える必要があります。
似た用語との違い
在庫管理では「過剰在庫」「滞留在庫」「不動在庫」「不良在庫」などの言葉が使われますが、これらに統一された定義があるわけではなく、企業や情報源によって使い方が異なります。
一般的には、次のような観点で区別すると管理しやすくなります。
- 過剰在庫:想定する需要や適正在庫水準に対して、多く保有している在庫
- 滞留在庫:一定期間、販売・出庫などの動きが少ない、または止まっている在庫
- 不動在庫・死蔵在庫:長期間動きがなく、今後の販売・使用可能性も低くなっている在庫を指す場合がある
- 不良在庫:販売・使用可能性や資産価値が低下した在庫を指す場合がある
これらは明確な順番で必ず移行するものではありません。自社ではそれぞれをどのような状態として扱うのか、社内基準を定義しておくことが重要です
これらは別々の状態ではなく、時間の経過とともに移行していく段階です。過剰に保有した在庫が長期間販売されない場合、滞留期間が長期化し、商品によっては値下げや評価損、廃棄などの対応が必要になる可能性があります。
滞留在庫は「まだ間に合う」段階
この段階論が重要な理由は、対処の効果とコストが段階によってまったく異なるためです。
不良在庫になれば、廃棄か評価損の計上しか選択肢がありません。しかし滞留在庫の段階なら、値下げ、販路の変更、店舗間の移動など、まだ打てる手が残っています。
つまり滞留在庫の管理とは、手遅れになってしまう前に見つける仕組みをつくることに他なりません。
▼関連記事:過剰在庫とは?原因・リスクから処分方法・再発防止まで徹底解説
自社の滞留基準をどう決めるか
滞留在庫の解説記事の多くは、基準の話に触れずに対処法へ進みます。しかし基準がなければ、そもそも滞留在庫を特定できません。
一律の日数では機能しない
「90日動かなければ滞留」のように全商品へ同じ日数を適用する方法もありますが、商品特性によって適切な保有期間が大きく異なる場合は、一律基準だけでは十分に判断できないことがあります。
日配食品なら3日で問題になり、定番のインテリア雑貨なら半年動かなくても正常な範囲かもしれません。同じ基準を一律に当てはめれば、片方は警告が鳴りすぎ、もう片方は手遅れになります。
滞留基準は商品特性と販売実績から設定する
滞留在庫を判断する基準は、商品の販売期間、季節性、賞味・使用期限、仕入リードタイム、過去の販売実績などをもとに設定します。
たとえば、年間を通じて販売する定番商品と、販売期間が限られる季節商品では、同じ日数を基準にする必要はありません。過去の販売実績から「通常どの程度の期間で販売される商品なのか」を確認し、商品カテゴリやSKUごとに基準を設定すると実態に合わせやすくなります。
また、在庫水準を評価する補助指標として、在庫回転率や交差比率を利用する方法もあります。たとえば交差比率200%を目標値として設定し、粗利率25%であれば必要な在庫回転率は年8回転となり、単純換算すると約46日分の平均在庫に相当します。
ただし、この46日は「入荷した商品を46日以内に売り切る期限」ではありません。一定期間の平均在庫水準を考えるための目安です。個々の商品の滞留判定は、最終販売日や入荷日、販売ペース、季節性などと組み合わせて判断しましょう。
段階を分けて設定する
実務では、基準を1つではなく複数設けると運用しやすくなります。
- 注意段階:基準日数の70%を経過。売場や見せ方を見直す
- 警告段階:基準日数を超過。値下げや移動を検討する
- 処分段階:基準日数の2倍を超過。損切りの判断をする
段階を分けることで、いきなり大幅値下げに走る事態を避けられます。早い段階で気づけば、小さな対処で済みます。
また、段階ごとに誰が判断するかも決めておくと運用が回ります。注意段階は店長の裁量、処分段階は本部の承認といった形です。権限が曖昧だと、誰も決断せずに時間だけが過ぎていきます。
▼関連記事:POSデータとは?売上アップにつながる分析手法と活用事例を解説
滞留在庫の見つけ方
基準を決めたら、次はその基準に照らして実際の在庫を洗い出します。
入荷日を記録しているか
滞留日数を算出するには、その在庫がいつ入荷したかの記録が必要です。ここが抜けていると、どれだけ基準を精緻に決めても判定できません。
在庫数だけを管理している場合、入荷日は残りません。入出庫の履歴を1件ずつ記録する運用に切り替える必要があります。
先入れ先出しが前提になる
もう一つの前提が、先に入荷したものから先に出す運用です。
後から入荷した分を先に出してしまうと、古い在庫が奥に残り続けます。帳簿上は動いているように見えても、実物は滞留している。この状態では正しい判定ができません。
補充時に新しい商品を奥へ入れる。この単純なルールの徹底が、滞留の可視化を支えます。
金額と点数の両方で見る
滞留在庫を洗い出す際は、点数だけでなく金額でも把握してください。
点数が少なくても単価が高ければ、拘束されている資金は大きくなります。逆に安価な商品が大量に滞留していれば、場所と作業効率を圧迫します。影響の種類が違うため、両面から見る必要があります。
滞留在庫が発生する4つの原因
1|需要予測のズレ
最も基本的な原因です。天候不順、トレンドの変化、競合の動き。予測できない要因もありますが、単純な数量の見誤りも含まれます。
2|欠品を避けるための過剰発注
欠品を避けることを優先するあまり、必要以上に安全在庫を持ったり、販売実績を上回る数量を発注したりすると、滞留在庫につながる場合があります。
発注担当者個人の判断だけでなく、安全在庫の設定や発注ルール、評価指標など、組織としての仕組みも確認することが重要です 。
3|部門間の連携不足
販売部門は欠品を避けたいため多めに持ちたがり、経理は在庫リスクを警戒し、製造や仕入は効率を優先する。それぞれが単独で動けば、在庫は最適化されません。
4|在庫の状態が見えていない
見落とされがちですが、根本的な原因です。何がいつから動いていないかを把握できていなければ、対処のしようがありません。
売上ランキングだけを見ていると、上位は目に入りますが、下位で止まっている商品は視界に入りません。滞留在庫は、意識して見ようとしなければ見えないものです。
滞留在庫が経営に与える影響
キャッシュフローの悪化
在庫は形を変えた現金です。仕入れた時点で資金が出ていき、売れて初めて戻ってきます。動かない在庫は、資金が固定されたままの状態を意味します。
とくに中小企業では資金の流動性が経営を左右します。帳簿上は資産に計上されていても、現金として使えなければ意味がありません。黒字でも資金が回らなければ経営は行き詰まります。
保管コストと作業効率の低下
保管スペースの賃料、管理にかかる人件費。動かない在庫にもコストは発生し続けます。
さらに、売れ筋商品の保管場所を圧迫し、ピッキングや棚卸の作業効率も下げます。滞留在庫は、他の商品の足を引っ張る存在でもあるのです。
会計上の評価への影響
棚卸資産は、期末時点で保有している在庫として貸借対照表に計上され、売上原価の計算にも影響します。
また、長期滞留や陳腐化などによって棚卸資産の収益性が低下している場合は、会計基準や税務上の要件に応じて、帳簿価額の見直しが必要になることがあります。
会計・税務上の具体的な処理は企業の状況によって異なるため、経理担当者や税理士・公認会計士などの専門家へ確認しましょう。
段階別の対処法
滞留の程度によって、取るべき手は変わります。
注意段階|見せ方を変える
まだ値下げする段階ではありません。売場での配置、陳列方法、POPの訴求を見直します。
動かない理由が商品そのものではなく、見つけてもらえていないことである場合も少なくありません。まずは同じ価格のまま、露出を変えて反応を見ます。
警告段階|移動と小幅な値下げ
多店舗展開しているなら、店舗間移動が最初の選択肢です。A店で動かない商品がB店では売れ筋というケースもあります。
値下げする場合も、いきなり大幅に下げず、まず小幅で反応を見てください。粗利率から算出した損益分岐を意識すれば、どこまで下げられるかが判断できます。
セット販売やまとめ買い特典で、単価を下げずに動かす方法も有効です。
処分段階|損切りを決断する
基準を大きく超えた在庫は、思い切った判断が必要です。
- アウトレットやセール専用のチャネルで販売する
- 在庫買取業者へ売却する
- フリマアプリやECモールなど別の販路を使う
- 今後の販売可能性が低い商品については、必要に応じて廃棄などの処分を検討する
処分は損失ではなく、資金の回収です。保管し続けるコストと、いま回収できる金額を比較して判断してください。
会計上は、長期滞留や陳腐化などによって棚卸資産の収益性が低下している場合、帳簿価額の見直しが必要になることがあります。また、実際に廃棄する場合には、社内承認や廃棄記録など、処分の事実を確認できる資料を残しておくことも重要です。
ただし、会計上の評価と税務上損金として認められる条件は必ずしも同一ではありません。具体的な処理については、税理士や公認会計士などの専門家へ確認してください。
滞留在庫を出さない仕組み
滞留日数を自動で監視する
人が目視で確認する運用は続きません。入荷日から何日経過したかを自動で判定し、基準を超えたらアラートが出る仕組みが理想です。
気づいた時点で対処できれば、大幅な値下げに至る前に手を打てます。
SKU単位で追う
型全体では販売実績があっても、特定のカラーやサイズだけが長期間残っている場合があります。アパレルなどSKU単位で在庫を持つ業態では、品番だけでなくSKU単位でも滞留状況を確認することが重要です。
とくにアパレルのようにSKUが多い業種では、粒度を細かくしなければ実態がつかめません。
発注量や在庫配分の見直しにつなげる
滞留在庫が発生した場合は、どのSKUが、どの店舗・チャネルで、どの程度残ったのかを確認し、次回の発注や在庫配分の見直しに活用します。
原因が過剰発注にある場合は、初回発注量を抑えて販売実績を確認してから追加発注する方法も選択肢です。一方、発注量を抑えすぎると欠品や機会損失につながるため、仕入リードタイム、最低発注数量、需要変動なども含めて判断する必要があります。
▼関連記事:リアルタイム在庫管理の実現方法|必要性・メリット・システム選びまで解説
小売・リユース業の滞留在庫を削減するなら、業種特化型クラウド基幹システムRECOREがおすすめ

長期間売れずに残っている商品を把握し、滞留在庫の削減や在庫回転率の改善につなげたい小売・リユース業の場合は、業種特化型のクラウド基幹システム「RECORE(リコア)」が有力な選択肢となります。
小売・リユース業向けに設計されたクラウド基幹システム「RECORE(リコア)」は、買取・仕入・販売(POS)・EC・在庫管理・顧客管理・KPI分析までを一元管理できるクラウド型のオールインワン基幹システムです。在庫情報は販売や買取、仕入と同時に自動更新され、実店舗とECを横断したリアルタイム管理が可能です。Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなど、小売・リユース業界向けの複数ECモールとの連携にも対応しています。

また、今までバラバラに契約していたシステムをRECORE一つに集約することで複雑なデータ連携の必要性も無くなり、ITコストを抑えることが可能です。さらに、コストや時間的制約などのハードルの高さから基幹システムのリプレイスを検討はしていてもためらっていた方でも、RECOREをサテライト基幹システムとして位置付け、RECORE APIで既存の基幹システムと連携し必要な機能だけ導入する、パッケージ型SaaSの枠を超え、既存基幹システムとAPI連携し、必要な機能を部分導入した事例もあります。
店舗・ECを横断して販売・在庫データを一元管理し、商品の売れ行きや在庫状況を把握しながら、滞留在庫の早期発見や販売施策・仕入れの見直し、在庫回転率の改善につなげたい場合は、業種特化型クラウド基幹システムRECOREの導入を検討することがおすすめです。
まとめ|基準を決めなければ、滞留は見えない
本記事では、滞留在庫の定義と類似用語の整理、自社の基準の決め方、発生原因、経営への影響、段階別の対処法、そして予防の仕組みを解説しました。
滞留在庫は、一定期間にわたって販売・出庫などの動きが少ない、または止まっている在庫です。ただし、「何日以上なら滞留」というすべての商品に共通する基準があるわけではありません。
重要なのは、商品の販売期間、季節性、過去の販売実績、仕入リードタイムなどをもとに、自社で滞留を判断する基準を設定することです。在庫回転率や交差比率から算出した平均在庫日数も、在庫水準を確認する補助指標として活用できます。
基準を設定したら、入荷日や最終販売日からの経過日数をSKU単位で確認し、滞留が長期化する前に販促、店舗間移動、追加仕入れの抑制、値下げなどを検討します。
まずは主要カテゴリについて、「通常どの程度の期間で販売されているか」「現在どの商品がその期間を大きく超えているか」を確認してみましょう。感覚ではなくデータで滞留を把握することが、在庫改善の第一歩です。



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