ABC分析とは?やり方と、分析結果を打ち手に変える実践的な使い方
ABC分析とは、商品や顧客を重要度の高い順にA・B・Cへ分類し、優先順位をつけて管理する手法です。「重点分析」とも呼ばれ、在庫管理の代表的なフレームワークとして広く使われています。やり方自体は難しくありません。
売上高や粗利額など、目的に応じて設定した評価指標の大きい順に並べ、累積構成比をもとにランクを分ける手法です。しかし実務でつまずくのは、分析した後です。「Aは在庫を厚く、Cは撤退を検討」という一般論では、現場は動きません。実際にはCランクでも切ってはいけない商品があり、Aランクでも利益に貢献していない商品があります。
本記事では、ABC分析の基本とやり方を押さえたうえで、分析結果を具体的な打ち手に変えるための考え方を解説します。
目次
ABC分析とは
定義と考え方
ABC分析とは、売上高やコスト、在庫といった指標のなかから重視する評価軸を1つ定め、その大きい順に対象をA・B・Cの3グループへ分類する手法です。
すべての商品を同じ基準で管理するのではなく、重点的に管理すべきものと、状況に応じて対応すればよいものを切り分ける。これにより、限られた時間と人員を効率的に配分できるようになります。
もともとは1950年代にアメリカで在庫管理の手法として考案されました。その後、品質管理や得意先管理、顧客分析へと応用範囲が広がっています。
パレートの法則が土台にある
ABC分析の背景にあるのが、イタリアの経済学者ヴィルフレド・パレートが見出したパレートの法則です。
パレートの法則:成果の8割は、構成要素の2割によって生み出される
小売業に置き換えれば、「売上の8割は上位2割の商品が生んでいる」ということになります。80対20の法則、あるいは重点分析と呼ばれるのはこのためです。
ただし現実に必ず20対80になるわけではありません。重要なのは比率そのものではなく、売上や在庫価値が一部の商品に集中していないかを確認し、重要度に応じて管理の優先順位を付けることです。
一般的なランクの区分
累積構成比によって、次のように分けるのが一般的です。
- Aランク: 累積構成比0〜70〜80%程度。全体への貢献度が高い商品群
- Bランク: Aランク以降から累積90〜95%程度までの中間層
- Cランク: 残りの貢献度が比較的小さい商品群
区分値に統一された絶対基準はなく、70/20/10や80/15/5など複数の考え方があります。自社の目的や商品構成に応じて基準を設定します。
ABC分析のやり方|4つの手順
STEP1|評価軸を決める
最初に「何を基準にランク分けするか」を決めます。売上高が最も一般的ですが、目的によって選ぶべき軸は変わります。
- 売上高:売上への貢献度を見たい場合
- 粗利額:利益への貢献度を見たい場合
- 販売数量:出荷頻度や作業負荷を見たい場合
- 在庫金額:資金の拘束状況を見たい場合
ここを曖昧にしたまま進めると、分析結果から何を判断すべきかが定まりません。
STEP2|データを大きい順に並べる
対象期間の実績を集計し、選んだ評価軸の大きい順に並べ替えます。期間の設定も重要で、季節性のある商材では1か月だけを見ると判断を誤ります。
STEP3|構成比と累積構成比を算出する
各商品が全体に占める割合(構成比)と、上位から積み上げた割合(累積構成比)を計算します。
累積構成比 = 上位からの累計売上 ÷ 全体の売上合計
STEP4|ランクを割り当てる
累積構成比に基づいてA・B・Cを割り当てます。あわせてパレート図を作成すると、どこで線を引くべきかが視覚的に判断しやすくなります。
パレート図は、商品ごとの実績を棒グラフで、累積構成比を折れ線で表したグラフです。折れ線の傾きが緩やかになる地点が、ランクの切れ目の目安になります。
Excelで行う場合の実務ポイント
少数の商品であればExcelでも十分に対応できます。手順は次のとおりです。
- ①データを売上の降順に並べ替える(データタブの並べ替え機能)
- ②構成比の列を追加し、各行の売上を合計で割る
- ③累積構成比の列を追加し、上から順に足し上げる
- ④IF関数でランクを自動判定させる(累積構成比が70%以下ならA、90%以下ならB、それ以外はC)
パレート図は、複合グラフ(棒グラフと折れ線の組み合わせ)で作成できます。折れ線は第2軸に設定し、0〜100%の範囲で表示させると見やすくなります。
分析結果をどう打ち手に変えるか
ABC分析は、ランク分けした時点では何の成果も生みません。ここからが実務です。
Aランク|欠品の影響を重点的に管理する
Aランクは、設定した評価軸への貢献度が高い商品群です。売上高を評価軸にした場合は、欠品による販売機会損失の影響が大きくなりやすいため、在庫状況や発注状況を優先的に確認します。
ただし、Aランクだからといって単純に在庫量を増やすのではなく、販売速度、需要変動、調達リードタイム、安全在庫、在庫保有コストなどを踏まえて適正在庫を設定することが重要です。
棚卸や在庫確認の頻度を他の商品より高めるなど、管理工数を重点配分する方法もあります。
売場においても、視認性の高い位置に配置し、フェイスを広く取る判断につながります。
ただしAランクだからといって、在庫を無制限に増やしてよいわけではありません。売れ筋であっても過剰に持てば資金が拘束されます。欠品を防ぎつつ、必要以上に積み上げない水準を見極めることが求められます。
あわせて、Aランク商品への依存度も確認しておきましょう。上位数品目に売上が極端に集中している場合、その商品が供給停止になったときのリスクが大きくなります。
Bランク|Aランクへの育成を検討する
準主力商品であり、扱いが最も難しい層です。
見るべきは、伸びているBなのか、落ちてきたBなのかという方向性です。前期はAだったのにBへ落ちた商品と、Cから上がってきた商品では、打つべき手がまったく異なります。
ランクは一時点の断面でしかありません。前期との比較で変化を見ることで、初めて意味のある判断ができます。
Cランク|整理か、意図的な維持か
多くの解説では「取扱停止や入れ替えを検討」とされますが、機械的に切ると失敗します。この判断については次章で詳しく述べます。
売上ABCだけでは見えないもの|粗利ABCとのクロス分析
「売れているが儲からない商品」を見つける
ABC分析でよくある誤りが、売上高だけを軸にすることです。売上が大きくても、粗利率が低ければ利益への貢献は限定的だからです。
そこで有効なのが、売上ABCと粗利ABCを別々に算出し、両者を掛け合わせて見る方法です。
売上A × 粗利A: 売上・粗利の両面で貢献度が高い主力候補
売上A × 粗利C: 売上は大きいが利益貢献が相対的に低い商品。集客目的の商品なのか、値引きや仕入原価に課題があるのかを確認する
売上C × 粗利A: 売上規模は小さい一方、粗利への貢献度が相対的に高い商品。露出や販売機会を増やす余地があるかを検討する
売上C × 粗利C: 売上・粗利とも貢献度が低いため、取扱継続の必要性を優先的に確認する
売上Aかつ粗利Cの商品は、集客の役割を担っている可能性があります。この場合は利益率の低さを理由に扱いをやめるのではなく、併売を促す配置を検討すべきです。
逆に売上Cかつ粗利Aの商品は、まだ知られていないだけの育成候補かもしれません。売場での見せ方や提案の仕方を変えることで、Bランクへ引き上げられる可能性があります。
売上と粗利の両方でCランクという商品こそが、本来見直すべき対象です。
▼関連記事:POSデータとは?売上アップにつながる分析手法と活用事例を解説
Cランクを切ってはいけない3つのケース
売上構成比が低いからといって、機械的に取扱をやめると顧客を失うことがあります。次のようなケースには注意してください。
1|品揃えの一部として意味を持つ商品
サイズ展開の端のサイズや、定番色以外のカラーがこれにあたります。単体では売れ数が少なくても、その商品があることで「ここに行けば揃う」という信頼が生まれます。
端サイズを切った結果、そのサイズの顧客が来店しなくなれば、失うのはCランク商品の売上だけではありません。
2|特定の顧客が継続購入している商品
全体で見れば売上構成比が低くても、特定の優良顧客が定期的に購入している商品があります。
この商品を切れば、その顧客の来店理由がひとつ消えます。商品軸のABC分析だけでは、この関係は見えません。顧客軸のデータと突き合わせて判断する必要があります。
3|季節性・トレンド性のある商品
年間で見ればCランクでも、特定の時期には主力になる商品があります。集計期間の取り方によって、こうした商品が不当に低く評価されることがあります。
季節商材は、シーズン期間だけを切り出してABC分析を行うほうが実態を正しく捉えられます。
ABC分析は「機械的に切るための道具」ではなく「考える対象を絞るための道具」
商品以外へのABC分析の応用
顧客のABC分析
顧客を購入金額順に並べ、A・B・Cへ分類する方法です。上位顧客が売上の何割を占めているかが分かり、優良顧客への投資判断に根拠を持たせられます。
Aランク顧客には先行案内や特別な特典を、Bランク顧客にはAへの引き上げ施策を。同じ販促費でも、対象を絞れば反応率は大きく変わります。
▼関連記事:小売業の顧客管理とは?重要性・課題・施策・成功ステップを解説
仕入先・時間帯・スタッフ別の分析
ABC分析は数値化できる対象であれば何にでも適用できます。仕入先別の取引額でABC分析を行えば、調達金額が集中している仕入先を把握でき、契約条件や調達リスクを確認する際の優先順位付けに活用できます。時間帯別の売上で分析すれば、シフト配置の判断材料になります。
切り口を変えるだけで、同じ手法から異なる示唆が得られる点が、ABC分析の汎用性の高さです。
ABC分析の注意点
過去のデータであるという前提
ABC分析はあくまで実績に基づく分析です。新商品は販売期間が短いため、既存商品と同じ期間累計で比較すると低く評価されやすい点に注意が必要です。発売後一定期間は別枠で評価したり、1日あたり・1週あたりの販売数で比較したりする方法があります。
新商品は別枠で扱い、一定期間の実績が出てから評価するという運用が必要です。
欠品していた商品は正しく評価されない
売れなかったのか、そもそも在庫がなくて売れなかったのかを、販売データだけでは区別できません。欠品期間があった商品は、実力より低く評価されます。
在庫データと突き合わせて、欠品の有無を確認したうえで判断してください。
Excel運用の限界
商品数が数十程度ならExcelで十分ですが、SKUが数百から数千に達すると、データの抽出と集計だけで相当な工数がかかります。
しかもABC分析は一度やって終わりではなく、定期的に繰り返すことで意味を持ちます。継続できる仕組みでなければ、分析は自然と止まります。
どのくらいの頻度で行うべきか
実施頻度は業態によって変わります。ABC分析の実施頻度は、商品の販売サイクルや季節性、商品入れ替えの頻度によって異なります。変化の速い商材では短い周期で、定番商品が中心の業態では比較的長い周期で見直すなど、自社の意思決定に必要な頻度を設定しましょう。
重要なのは、同じ条件で繰り返すことです。集計期間や評価軸が毎回変われば、前回との比較ができず、変化を捉えられません。一度決めた条件を固定して継続することが、分析を活かす条件になります。
▼関連記事:リアルタイム在庫管理の実現方法|必要性・メリット・システム選びまで解説
ABC分析を小売・リユース業の売上・在庫改善に活かすなら、業種特化型クラウド基幹システムRECOREがおすすめ

ABC分析を活用して商品の重要度や売れ行きを把握し、仕入れ・在庫管理・販売施策の改善につなげたい小売・リユース業の場合は、業種特化型のクラウド基幹システム「RECORE(リコア)」が有力な選択肢となります。
小売・リユース業向けに設計されたクラウド基幹システム「RECORE(リコア)」は、買取・仕入・販売(POS)・EC・在庫管理・顧客管理・KPI分析までを一元管理できるクラウド型のオールインワン基幹システムです。在庫情報は販売や買取、仕入と同時に自動更新され、実店舗とECを横断したリアルタイム管理が可能です。Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなど、小売・リユース業界向けの複数ECモールとの連携にも対応しています。

また、今までバラバラに契約していたシステムをRECORE一つに集約することで複雑なデータ連携の必要性も無くなり、ITコストを抑えることが可能です。さらに、コストや時間的制約などのハードルの高さから基幹システムのリプレイスを検討はしていてもためらっていた方でも、RECOREをサテライト基幹システムとして位置付け、RECORE APIで既存の基幹システムと連携し必要な機能だけ導入する、パッケージ型SaaSの枠を超え、既存基幹システムとAPI連携し、必要な機能を部分導入した事例もあります。
販売・在庫データを一元管理し、ABC分析などを通じて重点的に管理すべき商品を把握しながら、仕入れ判断や在庫配分、販売施策の改善につなげたい場合は、業種特化型クラウド基幹システムRECOREの導入を検討することがおすすめです。
まとめ|ABC分析は「絞るための道具」
本記事では、ABC分析の定義とパレートの法則、4つの手順、ランク別の打ち手、粗利とのクロス分析、Cランクの扱い方、そして注意点を解説しました。
ABC分析の手順自体は単純です。しかし、ランクを付けただけでは何も変わりません。大切なのは、Aランクには管理上の優先度を高く設定し、Bランクの変化を追い、Cランクは中身を吟味したうえで判断することです。
とくにCランクを機械的に切る運用は危険です。品揃えとしての意味、特定顧客との関係、季節性。これらを確認したうえで判断してください。ABC分析は切り捨てるための道具ではなく、考える対象を絞り込むための道具です。
まずは売上と粗利の2軸でランクを出し、両方で貢献度が低い商品から、取扱継続の目的や役割を確認してみてください。



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