SaaS型ERPとは?クラウドERPとの違い・メリット・選び方をわかりやすく解説
「SaaS型ERPとクラウドERPは何が違うのか」「SaaS型ERPのメリットやデメリットを知りたい」「自社に合ったSaaS型ERPの選び方がわからない」――ERPの導入形態が多様化する中で、こうした疑問を持つ企業の担当者は増えています。
SaaS型ERPとは、ベンダーがインフラからアプリケーションまでを一括管理し、ユーザーはインターネット経由で機能のみを利用するERPの提供形態です。自社でのサーバー管理やソフトウェアの保守が一切不要なため、初期費用と運用負荷を大幅に抑えて導入できます。
矢野経済研究所の調査によると、2024年の国内ERP市場におけるSaaSの売上高は前年比36.2%増となり、2025年にはERP市場全体の約25%をSaaSが占める見通しです。この記事では、SaaS型ERPの基本から、クラウドERPやオンプレミスとの違い、メリット・デメリット、導入時に押さえるべきFit to Standardの考え方、選び方のポイントまでを体系的に解説します。
目次
SaaS型ERPとは?基本の意味と仕組み
SaaS型ERPは、インターネット経由で利用できるERPの提供形態です。まずはSaaS型ERPの基本的な仕組みや特徴、市場が急速に拡大している背景についてわかりやすく解説します。
SaaS型ERPの定義
SaaS(Software as a Service)型ERPとは、ベンダーがクラウド上で提供するERPシステムを、ユーザーがインターネット経由で利用する形態です。サーバー・OS・ミドルウェア・アプリケーションのすべてをベンダーが管理するため、ユーザーはソフトウェアの機能のみを利用します。
自社でのハードウェア購入やソフトウェアのインストール、バージョンアップ作業が一切不要で、Webブラウザや専用アプリから即座にシステムにアクセスできます。複数の企業が同一のインフラを共有するマルチテナント方式が一般的で、この仕組みによってコストの効率化が実現されています。
SaaS型ERPが急成長している背景
国内ERP市場においてSaaS型の成長は顕著です。矢野経済研究所の調査によると、2024年のERPパッケージ市場におけるSaaSの市場規模は前年比36.2%増の371億8,600万円と推計されています。SaaS型がERP市場全体に占める割合は、2025年には約25%に達する見通しです。
この急成長の背景には、Fit to Standardの考え方がユーザー企業に浸透し始めたこと、生成AIなど最新技術をいち早く活用したいニーズが高まっていること、そしてIT人材不足に伴い運用負荷の低いSaaS型への関心が高まっていることがあります。従来は大企業がIaaS/PaaS型でERPをクラウド化するケースが中心でしたが、最近ではFit to Standardの浸透により、中堅・中小企業だけでなく大企業でもSaaS型を採用する動きが広がっています。
出典:矢野経済研究所「ERP市場動向に関する調査を実施(2025年)」
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SaaS型ERPとクラウドERP・オンプレミスの違い
「SaaS型ERP」と「クラウドERP」は混同されがちですが、厳密には異なる概念です。ここでは各形態の違いを整理します。
クラウドERPの3つの形態:SaaS・PaaS・IaaS
クラウドERPは、ベンダーが管理する範囲によってSaaS型・PaaS型・IaaS型の3つに分類されます。
SaaS型は、インフラからアプリケーションまでのすべてをベンダーが管理します。ユーザーは機能のみを利用するため、運用負荷が最も低い形態です。PaaS型は、インフラとプラットフォーム(OS・ミドルウェア)までをベンダーが管理し、アプリケーション層はユーザーが構築・管理します。自社独自のカスタマイズが可能な一方、ソフトウェアの保守はユーザー側の作業になります。
IaaS型は、インフラ(サーバー・ストレージ・ネットワーク)のみをベンダーが提供し、OS以上のレイヤーはすべてユーザーが管理します。自由度は最も高いものの、運用負荷はオンプレミスに近くなります。つまり、SaaS型が最も「おまかせ」度が高い形態であり、IT人材が限られる中小企業にとって最も導入しやすい選択肢です。
▼関連記事:基幹システムクラウド移行ガイド|中小企業が知るべき成功の秘訣と注意点
SaaS型ERPとオンプレミス型ERPの違い
コスト構造の違い
SaaS型ERPはサーバーやネットワーク機器を自社で用意する必要がなく、初期費用を大幅に抑えられます。月額または年額のサブスクリプション形式で利用料を支払うため、コストの予測がしやすい点も特徴です。
オンプレミス型はハードウェア購入・ライセンス費用・導入コンサルティングなどで数百万〜数千万円の初期投資が必要になるケースがあります。ただし、月額利用料が発生しないため長期運用ではオンプレミスの方がトータルコストが低くなる場合もあります。自社の利用期間やユーザー数を踏まえて、5年・10年単位でのTCO(総保有コスト)比較を行うことが重要です。
運用・保守の負担の違い
SaaS型ERPでは、サーバー管理・セキュリティパッチの適用・バックアップ・バージョンアップなど、運用保守のほぼすべてをベンダーが担います。社内にIT専任者がいなくても安定して運用できるのは大きなメリットです。
オンプレミス型では、これらをすべて自社で行う必要があり、IT人材の確保と継続的な運用コストが求められます。障害発生時の対応も自社責任となるため、中小企業にとっては大きな負担になりかねません。
カスタマイズ性の違い
オンプレミス型の最大の強みは、自社の業務フローに合わせた自由なカスタマイズができる点です。アドオン開発やプログラムの改変も柔軟に行えます。
一方、SaaS型はマルチテナント方式で複数企業がコードを共有しているため、個別のプログラム改変は原則できません。このため、SaaS型ERPの導入では「システムに業務を合わせる」Fit to Standardの考え方が前提となります。
▼関連記事:【中小企業向け】基幹システム導入の費用目安を徹底解説!失敗しない予算策定のポイント
SaaS型ERP導入のメリット
SaaS型ERPは、初期費用を抑えながら短期間で導入できるほか、運用負担の軽減や自動アップデートなど多くのメリットがあります。導入によって得られる主な効果を詳しく紹介します。
初期費用を抑えて短期間で導入できる
SaaS型ERPの最大のメリットは、初期費用の大幅な削減と導入期間の短縮です。ハードウェアの購入やインフラ構築が不要なため、契約後すぐに利用を開始できるケースもあります。
中小企業にとって、数百万〜数千万円の初期投資なしにERPを導入できる点は大きな魅力です。月額数万円から利用可能なサービスもあり、資金面のリスクを最小限に抑えてスタートできます。
常に最新の状態で利用できる
SaaS型ERPでは、法改正への対応や新機能の追加といったアップデートをベンダーが自動で適用します。ユーザーは追加作業なしで常に最新のシステムを利用でき、インボイス制度や電子帳簿保存法などの法制度変更にも迅速に対応できます。
オンプレミス型やPaaS型では、バージョンアップのたびにコストと工数が発生しますが、SaaS型ならその負担がなく、最新のセキュリティ対策や生成AI機能なども自動的に利用可能になります。
場所やデバイスを問わずアクセスできる
SaaS型ERPはインターネット環境があれば、オフィス・自宅・出張先など場所を問わずシステムにアクセスできます。スマートフォンやタブレットからの利用にも対応しているサービスが多く、テレワークや多店舗運営にも柔軟に対応できます。小売業のように本部と複数店舗でリアルタイムにデータを共有する必要がある業態では、このメリットは特に大きいといえます。
IT運用の負荷を大幅に軽減できる
サーバー管理・セキュリティ対策・バックアップ・障害対応など、IT運用に関わる業務をベンダーに任せられるため、社内のIT部門の負荷を大幅に軽減できます。限られたIT人材をシステム運用ではなく、データ活用や業務改善といった戦略的な業務に振り向けられる点も見逃せないメリットです。
▼関連記事:中小企業の基幹システム導入完全ガイド|メリット・選び方・費用・補助金を徹底解説
SaaS型ERP導入のデメリットと注意点
SaaS型ERPには多くの利点がある一方で、カスタマイズ性やベンダーへの依存など、事前に理解しておきたい注意点もあります。導入後のミスマッチを防ぐためのポイントを解説します。
カスタマイズの自由度が限られる
SaaS型ERPはマルチテナント方式で提供されるため、個別のアドオン開発やプログラム改変は原則としてできません。自社固有の業務フローに完全に合わせたカスタマイズが必要な場合は、PaaS型やオンプレミス型の方が適しています。
ただし、近年はSaaS型でありながらAPIを通じた外部システムとの連携や、ノーコード・ローコードによるワークフローのカスタマイズに対応する製品も増えてきています。また、業種特化型のSaaS型ERPを選べば、自社の業界に必要な機能が標準で備わっているため、カスタマイズの必要性自体を大幅に減らせます。
ベンダーへの依存度が高まる
SaaS型ERPでは、インフラからアプリケーションまでの管理をベンダーに委ねるため、ベンダーのサービス品質や事業継続性に依存することになります。ベンダーのサービス停止やセキュリティインシデントが自社の業務に直接影響するリスクがあります。
このリスクを軽減するためには、SLA(サービスレベル合意)の内容確認、データのエクスポート方法の事前確認、ベンダーの経営安定性や認証取得状況のチェックが重要です。特にISO/IEC 27001やSOC2などの第三者認証を取得しているベンダーであれば、セキュリティ面での信頼性が高いといえます。
長期利用時のコスト累積
SaaS型ERPは月額課金制のため、利用期間が長くなるほどトータルコストが累積します。ユーザー数が多い企業ではライセンス費用が大きな負担になる場合もあります。導入前に5年・10年単位でのTCO(総保有コスト)比較を行い、費用対効果を検証しましょう。
SaaS型ERP導入で押さえるべき「Fit to Standard」の考え方
SaaS型ERPを最大限に活用するには、「業務をシステムに合わせる」というFit to Standardの考え方が欠かせません。その概要と導入を成功させるためのポイントを紹介します。
Fit to Standardとは
Fit to Standardとは、ERPの標準機能に合わせて自社の業務プロセスを見直す考え方です。従来のERP導入では「システムを業務に合わせる」カスタマイズが主流でしたが、SaaS型ERPでは「業務をシステムに合わせる」アプローチが前提となります。
SaaS型ERPのメリットである自動アップデートやコスト効率は、標準機能をそのまま活用することで最大限に発揮されます。個別カスタマイズを加えるとアップデートの適用が困難になり、SaaS型を選んだ意味が薄れてしまいます。
Fit to Standard成功のポイント
Fit to Standardを成功させるには、まず現行の業務プロセスを棚卸しし、「本当に必要な独自業務」と「慣習で続けているだけの業務」を切り分けることが重要です。多くの場合、独自だと思っていた業務が実はERPの標準機能でカバーできるケースが少なくありません。
また、Fit to Standardは単なるコスト削減策ではなく、世界標準のベストプラクティスを取り入れて自社の業務品質を引き上げる機会と捉えることが大切です。経営層のコミットメントのもと、現場との丁寧な合意形成を進めましょう。業種特化型のSaaS型ERPを選択することで、自社の業界に最適化された標準業務モデルをそのまま活用できるため、Fit to Standardの実現がより容易になります。
▼関連記事:基幹システム導入の進め方について詳しくはこちら
自社に合ったSaaS型ERPの選び方
SaaS型ERPは製品によって対応業種や機能、サポート体制が大きく異なります。導入後の成果を高めるために、選定時に確認すべき重要なポイントを解説します。
業種適合度を最優先で確認する
SaaS型ERPは標準機能をベースに利用する形態であるため、自社の業種に必要な機能が標準で備わっているかが最も重要な判断基準です。業種特化型のSaaS型ERPを選べば、カスタマイズなしで業界固有の業務フローに対応でき、Fit to Standardの実現が容易になります。
たとえば小売・リユース業であれば、POS連携・多店舗在庫管理・EC併売・買取管理・顧客ランク管理などが標準機能に含まれている製品を選ぶと、導入効果が大きく高まります。
セキュリティとサポート体制を比較する
SaaS型ERPにはISO/IEC 27001やSOC2などの情報セキュリティ認証を取得している製品を選びましょう。データの暗号化方式やバックアップ体制、SLAの稼働率保証なども事前に確認すべきポイントです。
サポート体制については、電話・チャット・リモート操作など複数チャネルでの対応があるか、対応時間帯は自社の営業時間をカバーしているか、導入時のコンサルティングや研修支援が受けられるかを確認しましょう。
拡張性とAPI連携の対応状況を確認する
事業の成長に伴い、ユーザー数の追加・新規店舗の開設・EC展開・外部システムとの連携など、将来的な拡張が必要になるケースは多くあります。API連携やモジュール追加が容易にできるかどうかを確認し、将来の成長に対応できるSaaS型ERPを選びましょう。
▼関連記事:【最新版】中小企業向け基幹システム(ERP)おすすめ10選!選び方から導入の成功ポイントまで
ERPをSaaSで導入するなら、小売・リユース業向けクラウド基幹システムRECOREがおすすめ

SaaS型ERPは、インターネット経由で利用できるため、自社でサーバーを構築・運用する必要がなく、短期間で導入しやすいことが特徴です。また、ソフトウェアのアップデートや保守も提供会社が対応するため、運用負担を軽減できるメリットがあります。一方で、SaaS型ERPを選ぶ際は、導入のしやすさだけでなく、自社の業務に必要な機能が十分に備わっているか、業界特有の業務に対応できるかを確認することが重要です。
小売・リユース業向けに開発されたクラウド基幹システム「RECORE(リコア)」は、SaaS型で提供されるクラウドERPとして、買取・仕入・販売(POS)・EC・在庫管理・顧客管理・KPI分析までを一元管理できます。販売や買取と同時に在庫情報がリアルタイムで更新されるため、店舗とECの在庫を常に正確に把握できます。また、Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなど複数のECモールとの連携にも対応しており、複数チャネルを運営する企業の業務効率化を支援します。

さらに、これまで個別に利用していたPOSやEC管理、在庫管理システムをRECOREへ統合することで、システム間のデータ連携や重複入力を削減し、運用コストの最適化につながります。既存の基幹システムを活用しながら、RECORE APIを利用して必要な機能だけを追加するサテライト基幹システムとして導入できるため、段階的なシステム刷新にも柔軟に対応可能です。
SaaS型ERPの導入によって業務効率化と情報の一元管理を実現したい小売・リユース事業者は、業界に特化したクラウド基幹システムRECOREの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
まとめ
SaaS型ERPとは、インフラからアプリケーションまでをベンダーが一括管理し、ユーザーはインターネット経由で機能のみを利用するERPの提供形態です。初期費用の大幅な削減・運用負荷の軽減・自動アップデートによる常時最新化・リモートアクセスの実現など、多くのメリットがあります。
一方で、カスタマイズの自由度は限られるため、「業務をシステムに合わせる」Fit to Standardの考え方がSaaS型ERP導入の前提となります。業種特化型のSaaS型ERPを選ぶことで、標準機能での適合度を高め、Fit to Standardをスムーズに実現できます。
小売業やリユース業でSaaS型ERPの導入を検討しているなら、業種特化型のクラウド基幹システム「RECORE」をぜひご検討ください。買取からPOS、EC連携、在庫管理、顧客管理、KPI分析まで、小売・リユース業に必要な業務を一つのシステムで完結でき、初期費用を抑えた段階的な導入にも対応しています。
CEO/セールスコンサルタント
佐藤秀平
1992年7月1日生まれ。大阪教育大学卒業。在学中小中高の教員免許を取得しながら、リユース業とコンサルティング業を主体とする会社を設立。その後、会社を解散し、株式会社船井総合研究所に新卒入社。幅広い規模のリユース企業のコンサルティングを手がけ経験を積む。2016年10月31日に株式会社NOVASTOを立ち上げ、代表取締役に就任。2017年12月に船井総研を退職し、NOVASTOに専念。業界紙リサイクル通信のコラムを執筆中。



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