在庫管理の方法4種を比較|自社に合うやり方の選び方と移行の判断基準
在庫管理の方法を調べると、Excelでの作り方を解説する記事と、システム導入を勧める記事に二分されます。しかし本当に知りたいのは、自社にはどちらが適しているかという判断基準ではないでしょうか。方法に絶対的な優劣はありません。商品点数が少なく、入出庫頻度も低い場合は、Excelやスプレッドシートでも十分に管理できるケースがあります。
一方、商品点数や拠点数、入出庫の頻度、同時に操作する人数、ECなど連携するチャネルが増えるほど、表計算ソフトだけでの管理は複雑になります。重要なのは、SKU数だけで判断するのではなく、自社の運用条件をもとに現在の方法が適しているかを見極めることです。
本記事では、4つの管理方法をコストと限界の両面から比較し、移行を判断するタイミングと、方法を変えても解決しない問題までを解説します。
目次
在庫管理の方法を選ぶ前に
目的を確認する
在庫管理の目的は、単に数を数えることではありません。
- 欠品を防ぎ、販売機会を逃さない
- 過剰在庫を防ぎ、資金の固定化を避ける
- 探す時間をなくし、作業を効率化する
- 数字にもとづいて発注を判断できるようにする
どこに重きを置くかによって、適した方法は変わってきます。数を把握できれば十分なのか、分析まで行いたいのかを最初に決めてください。
管理単位を決める
方法の前に決めるべきなのが、何を1つと数えるかという管理単位です。
アパレルであればカラーとサイズで分けたSKU単位、リユースや一点物であれば個品単位。この設計を誤ると、どの方法を選んでも必要な情報は得られません。最初に決めるべき前提です。
分けずに記録した情報は、後から分解できない
在庫管理の4つの方法を比較する
方法1|紙・手書き
棚札やノートに記入する方法です。導入コストはゼロで、誰でもすぐに始められます。
ただし記入漏れや転記ミスが起こりやすく、記録が現場に分散するため全体の把握ができません。複数人で運用すると、記入ルールのばらつきも生じます。
商品点数や入出庫の頻度、管理する担当者・拠点が増えるほど、記録の更新や全体状況の把握が難しくなるため、より効率的な管理方法への移行を検討する必要があります。
方法2|Excel・スプレッドシート
最も広く使われている方法です。多くの企業がすでに導入しているため追加コストがかからず、関数やピボットテーブルを使えば集計も自動化できます。
バーコードリーダーを組み合わせることも可能です。リーダーはキーボード入力と同じ仕組みで動くため、セルにカーソルを合わせて読み取れば、コードがそのまま入力されます。数千円のリーダーを買うだけで、手入力のミスを大幅に減らせます。
一方、表計算ソフトによる在庫管理では、運用方法によって次のような課題が生じる場合があります。
- 更新の手間がかかる:販売・入荷などの情報を手入力する運用では、入力されるまで在庫に反映されない
- 複数拠点での運用が複雑になる:共同編集は可能でも、拠点ごとの入出庫ルールや権限管理が複雑になりやすい
- 属人化しやすい:複雑な関数やマクロを使用すると、作成者以外が保守しにくくなる
- データ量や処理内容によって動作が重くなる:大量のデータや複雑な数式を扱う場合は、処理速度や保守性に課題が生じることがある
とくに属人化は深刻です。複雑な関数やマクロで組まれたファイルは、作成者が不在になった時点でブラックボックス化します。
Excelを使い続ける場合でも、いくつかの工夫で精度は上げられます。
- 在庫数を上書きしない:必ず入庫と出庫の履歴を残し、差引で在庫を算出する
- ファイルを1つに統一する:複数のコピーが存在すると、どれが最新か分からなくなる
- 入力ルールを文書化する:表記ゆれを防ぎ、担当者が変わっても運用を維持できる
とくに1つ目は基本原則です。現在の在庫数を直接書き換える運用にすると、いつ何が動いたかが追えなくなり、差異が出ても原因を特定できません。
方法3|在庫管理専用システム
在庫の入出庫、棚卸、発注点管理に特化したシステムです。バーコードやハンディターミナルと連携でき、リアルタイムで在庫を把握できます。
近年はクラウド型が主流となり、初期投資のハードルは下がりました。小規模なら無料プランで始められるサービスもあります。
注意点は、販売や顧客の情報とは分かれていることです。レジで売れた分を別途反映させる必要があれば、そこに手作業が残ります。
方法4|基幹システム(POS一体型)
販売、在庫、顧客、ECを一つの基盤で管理する方法です。
レジで会計すれば売上が計上され在庫が減る。入荷時にバーコードを読めば在庫が増える。この連鎖が自動で成立するため、記録漏れによる差異が構造的に減ります。
小売店舗のように販売と在庫が直結する業態では、この構成が最も相性が良くなります。
▼関連記事:リアルタイム在庫管理の実現方法|必要性・メリット・システム選びまで解説
どの方法でも押さえるべき基本の手法
ツールを選ぶ前に、在庫管理そのものの考え方を押さえておきましょう。これらは紙でもシステムでも共通します。
先入れ先出し
先に入荷したものから先に出す原則です。食品なら消費期限、アパレルならシーズンの鮮度に直結します。
補充時に新しい商品を奥へ入れる。先に入荷した商品から出庫・販売するルールを設けることで、古い在庫が残り続けるリスクを抑えやすくなります。特に消費期限・使用期限のある商品では重要な管理方法です。
ロケーション管理
どこに何があるかを決め、記録する方法です。「探す時間」は記録に残らないため軽視されがちですが、積み上げると相当な工数になっています。
棚に番号を振り、商品と保管場所を紐づけておけば、担当者以外でも即座に見つけられます。
発注点の設定
「在庫が一定数量まで減ったら発注する」という基準を商品ごとに設定する方法です。
基本的な考え方は、納品までに販売すると見込まれる数量に、需要変動や納期遅延に備える安全在庫を加えて発注点を設定することです。
発注点 = リードタイム中の需要量 + 安全在庫
たとえば1日平均10個販売し、発注から納品まで5日、安全在庫を20個とする場合、発注点の目安は70個です。実際の発注判断では、発注済み数量や引当済み在庫、季節変動なども考慮します
定期的な棚卸
帳簿上の在庫と実物を突き合わせる作業です。年1回だけでは差異の発生から発見までが長すぎ、原因を特定できません。
頻度を上げるほど原因を追いやすくなりますが、作業負荷も増えます。全商品は年1回、売れ筋だけは毎月といった使い分けが現実的です。
自社に合う方法を選ぶ4つの判断軸
方法そのものに優劣はありません。次の4点から、自社の現在地を判断してください。
軸1|管理する商品・SKU数
管理するSKU数は、在庫管理方法を検討する一つの判断材料です。SKU数が増えるほど、入出庫履歴や棚卸、商品マスタの管理量も増加します。
ただし、「○SKUを超えたらExcelでは管理できない」という一律の基準はありません。SKU数が少なくても入出庫が頻繁で複数拠点を運営していればシステム化の効果が大きい場合があり、反対にSKU数が多くても更新頻度が低く、単一拠点であれば表計算ソフトで管理できる場合があります。
SKU数だけでなく、入出庫頻度、拠点数、利用人数、必要な更新速度などとあわせて判断しましょう。
軸2|拠点数とチャネル数
拠点が1つならExcelでも回りますが、複数店舗や倉庫、ECを併用すると事情が変わります。
チャネルごとに在庫を分ければ全体では過剰になり、共有すれば売り違いが起こる。この矛盾を人力で解決しようとすると、確認作業だけで日が暮れます。
軸3|更新の頻度と即時性
在庫がどれだけ速く動くかも判断材料です。
入出庫の頻度が高いほど、在庫情報を更新するまでの時間差が販売や接客に影響しやすくなります。特に店舗・ECで在庫を共有する場合や、接客中に他店舗の在庫を確認する場合は、どの程度の更新速度が必要かを確認しましょう。
接客中に他店の在庫を確認したい場面があるかどうかも、重要な判断基準になります。
軸4|データを何に使うか
数を把握するだけで足りるのか、それとも発注判断や分析に使いたいのか。
滞留日数の把握、粗利率の分析、顧客との紐づけ。これらを行いたいなら、在庫だけを切り出したシステムでは不十分です。販売データと一体で扱える構成が必要になります。用途から逆算して選んでください。
判断軸:点数/拠点とチャネル/更新の即時性/データの用途
移行を検討すべき5つのサイン
現在の方法を変えるべきかどうかは、次の兆候で判断できます。
1|在庫を数え直す作業が発生している
帳簿の数字が信用できず、毎回現場で数え直している。この状態は、記録の仕組みが機能していない証拠です。
2|在庫の問い合わせに即答できない
「他店にありますか」と聞かれて、電話で確認している。この対応にかかる時間は、聞く側と答える側の両方から失われています。
3|棚卸に何日もかかっている
目視とメモで数えている限り、点数に比例して時間は増えます。バーコードを使えば同じ作業を大幅に短縮できます。
4|特定の人しかファイルを触れない
属人化のサインです。その担当者が休んだ日に在庫が分からなくなるなら、事業のリスクになっています。
5|欠品と過剰在庫が同時に起きている
全体の在庫金額は多いのに、売れ筋は切れている。これは在庫の中身を把握できていないことを示します。数を数えるだけの管理から、分析できる管理への移行が必要な段階です。
▼関連記事:過剰在庫とは?原因・リスクから処分方法・再発防止まで徹底解説
移行時に押さえるべきこと
在庫管理方法を変更する際は、商品マスタや現在庫、入出庫履歴など、どのデータを新しい環境へ移行するかを整理する必要があります。
商品数が多い場合は、商品マスタの整備やデータクレンジングに時間がかかることもあるため、事前に必要な項目・データ形式・移行範囲を決めておきましょう。
移行方法には一括移行と段階移行があり、シーズン切り替えや期首など業務上の区切りに合わせる方法もあります。既存在庫や過去データをどこまで移行するかは、導入するシステムと業務要件に応じて決定します。
また、登録の担当と期限を決めておいてください。「手が空いたときにやる」運用にすると、移行は必ず滞ります。
方法を変えても解決しないこと
システムを入れれば差異がなくなるという誤解
重要な点なので明確に書きます。バーコードやRFIDを導入しても、それだけで理論在庫と実在庫の乖離が解消されるわけではありません。
スキャン漏れ、重複スキャン、記録し忘れ。人が介在する以上、これらは起こります。ツールはミスを減らしますが、ゼロにはしません。
差異を生むのは運用ルールの不在
実際に差異を生む原因の多くは、次のような運用の抜けにあります。
- 値引きや廃棄が在庫データに反映されていない
- 店舗間移動を記録せずに商品を運んでいる
- 返品対応と在庫処理が別々のタイミングで行われている
- サンプル出しや社内消費が記録されていない
これらは仕組みではなくルールの問題です。「移動は必ずシステムに記録してから運ぶ」といった運用を定め、全員に徹底させなければ、どの方法を選んでも差異は生まれ続けます。
ツール導入と運用設計はセットで進める
差異が出たら調整せず、原因を追う
棚卸のたびに数値を合わせて終わりにしていては、原因は永久に解消されません。
差異が出た商品に偏りはないか、特定の部門や時期に集中していないか。ここまで確認して初めて、運用の改善につながります。
小売・リユース業の在庫管理を効率化するなら、業種特化型クラウド基幹システムRECOREがおすすめ

Excelや手作業による在庫管理から脱却し、店舗・ECに分散する在庫情報を正確かつ効率的に管理したい小売・リユース業の場合は、業種特化型のクラウド基幹システム「RECORE(リコア)」が有力な選択肢となります。
小売・リユース業向けに設計されたクラウド基幹システム「RECORE(リコア)」は、買取・仕入・販売(POS)・EC・在庫管理・顧客管理・KPI分析までを一元管理できるクラウド型のオールインワン基幹システムです。在庫情報は販売や買取、仕入と同時に自動更新され、実店舗とECを横断したリアルタイム管理が可能です。Amazon、楽天市場、Yahoo!ショッピングなど、小売・リユース業界向けの複数ECモールとの連携にも対応しています。

また、今までバラバラに契約していたシステムをRECORE一つに集約することで複雑なデータ連携の必要性も無くなり、ITコストを抑えることが可能です。さらに、コストや時間的制約などのハードルの高さから基幹システムのリプレイスを検討はしていてもためらっていた方でも、RECOREをサテライト基幹システムとして位置付け、RECORE APIで既存の基幹システムと連携し必要な機能だけ導入する、パッケージ型SaaSの枠を超え、既存基幹システムとAPI連携し、必要な機能を部分導入した事例もあります。
店舗・ECを横断した在庫情報を一元管理し、販売や仕入に連動して在庫情報を更新することで、在庫管理の負担軽減や欠品・過剰在庫の防止、適正在庫の維持につなげたい場合は、業種特化型クラウド基幹システムRECOREの導入を検討することがおすすめです。
まとめ|方法選びは「現在地」から判断する
本記事では、在庫管理の4つの方法、選択の判断軸、移行を検討すべきサイン、そして方法を変えても解決しない問題を解説しました。
紙もExcelも、条件が合えば十分に機能する方法です。問題は、規模が変わったのに同じやり方を続けていることにあります。
管理点数、拠点とチャネルの数、更新の即時性、データの用途。この4つで自社の現在地を測り、限界が見えたら次の方法へ移る。その判断を先延ばしにするほど、移行の負担は大きくなります。
そして忘れてはならないのが、運用ルールです。どんな仕組みを入れても、記録されないものは管理できません。まずは値引きや廃棄、店舗間移動が正しく記録されているかを確認してみてください。そこに抜けがあるなら、ツールを変える前に手を打つべき課題があります。



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